この金額で仕入れて、リノベーションにこれくらいかける。この価格で売れば、利益はこれくらい残る。
私も、そんなふうに買取再販の収支を考えていました。
ところが、実際にやってみると、ほかにもかかるお金が結構あるのです。銀行の利息、予定から増えた工事費、売るために追加する費用。そして、売った後のアフター対応まで。
簡単につくった収支と、実際に残る利益。
その間には、思っていた以上にズレがありました。
不動産業に25年以上携わり、仲介会社を15年経営してきた和泉利明です。私自身、マンションを買い、リノベーションして再販売する事業もやってきました。今回は、その中で感じた計算と現実の違いと、売上を追う中で会社が消耗してしまう難しさをお話しします。
目次
融資がついても、自己資金は出ていく
まず、物件を買うお金です。
銀行から仕入れ代金の全額を借りられることもあれば、リノベーション費用まで借りられることもあります。ただ、私が経験してきた中でも、いつも同じ条件で借りられたわけではありません。
銀行や物件によっては掛け目が入り、仕入れ代金の一部を自社で出す。物件の購入には融資がついても、リノベーション費用は借りられない。そうなると、そこには現金が必要です。
私も、リノベーション費用を現金で出し、そのお金が売却まで寝てしまうことを経験しました。
ここで分けて考えたいのは、費用と、その支払いに使うお金です。自己資金で払うか、借りて払うかで、仕入れ価格そのものが変わるわけではありません。ただ、融資の条件によって、会社が用意する現金は変わります。
いくら利益が残るかと、いくら現金を用意するか。
両方の計算があるのです。
一方、借りたお金には利息がかかる。こちらは収支に入るコストです。融資がつくと分かっても、それだけでお金の見通しが立ったわけではありませんでした。
工事費だけでなく、工期も動く
リノベーションも、最初に見ていた金額のまま終わるとは限りません。工事費が当初の金額と違ってくることがありました。
もう一つは、時間です。
工事の期間は、時期によって延びることもありました。売るまでを1か月半で考えていたものが、2か月になる。そういうズレも出てきます。
予定表で見れば、半月の違いです。でも、その間も物件を持ち、借入が残っていれば利息がかかる。先に出したお金が戻る時期も、後ろへずれます。
時間が延びると、回収が遅れるうえに、その間のコストも増える。
予定した価格で売れれば、販売はうまくいったように見えます。ただ、そこにたどり着くまでに使ったお金は、最初の計算どおりとは限らないのです。
売るために、さらにお金を使う
工事が終わっても、それで支出が終わるわけではありません。
例えば、なかなか売れないので、ホームステージングをしようという話になる。家具などで暮らしをイメージしやすくし、物件の見せ方を変える。そのためにも費用がかかります。
売るために動くことにも、コストがかかる。
ここが、難しいところですよね。
早く売りたいから、販売にお金をかける。そのまま待てば、保有する時間が延びるかもしれない。追加する費用と、待つ間の負担。その両方があるのです。
ホームステージングをすれば必ず売れる、という話でもありません。それでも、どこに費用を使えば買い手に伝わるのかを考え、手を打っていく。販売中にも、お金を使う判断が続きます。
売れた後にも、費用が出ていく
さらに、私の計算で大きく抜けていたのが、アフターサービスでかかるお金でした。
売却が終わると、これで利益が決まった、と考えてしまう。
でも、その後に対応が必要になり、費用が出ることもありました。
売った時点の数字だけで、その一件を見終えてしまっていた。
販売中の追加費用は、その物件を売るためのお金として意識しやすいと思います。ところが、売り終わった後の支出は、すでに終わった仕事の話になる。最初の見込みと振り返って比べるときに、そこまで含めて見ていたか。
アフター対応でどんな費用が出るかは、案件によって違います。それでも、売った後に費用が出る可能性まで、最初の計算に十分入れていなかったのです。
売上を維持するために、また仕入れる
買取再販で気をつけたいのは、一件の採算だけではありません。それを繰り返したとき、会社がどんな状態になるかです。
例えば、5,000万円で売却し、仕入れや工事、その一件にかかった費用を引くと、残る利益は100万円。それでも、売上の数字は5,000万円です。
不動産は、一件の金額が大きい。仮に5,000万円の売却を年間20件積み重ねれば、売上は10億円になります。でも、年商10億円という数字だけでは、どれだけ利益が残ったかは分かりません。
売上は大きくなっている。けれど、利益は思うようには残っていない。
ここで、さらに売上を追いかけるとどうなるか。
前年と同じ売上をつくるために、今年も仕入れが必要になる。もっと売上を伸ばすなら、さらに仕入れる。売上の目標が上がるたびに、買わなければならない件数や金額も増えていく。そのペースを維持することが、会社の前提になってしまうのです。
売上を伸ばすために買っているうちに、売上を落とさないために買い続ける。
市場の状況は変わります。仕入れ価格が高くなり、利益を見込める物件が少なければ、買うペースを落とす判断も必要だと思います。
ただ、現場では、そう簡単にはいきません。
仕入れを減らせば、次の売上をどうつくるかが問題になる。営業の成績にも影響が出ます。歩合などで成績が収入に結びついているなら、営業にとっても、簡単に受け入れられる話ではないと思います。
採算を守るために、仕入れを抑えたい。でも、会社の売上も、営業の収入も落としたくない。
利益が薄いなら買わなければいい、という一言では片づかないのです。仕入れのペースを変えるなら、売上の計画や営業の評価・報酬も合わせて考える必要がある。この調整が難しいのだと思います。
しかも、一件ごとの利益が薄くても、仕入れ、工事、販売、アフター対応という仕事はある。社員は動き、資金も使い、売れ残るリスクも引き受けます。
忙しさは増えているのに、会社に残る利益は少ない。それを件数で補おうと、また次の物件を買う。すると、仕事も資金の負担も、さらに増えていく。
売上の数字が伸びていると、事業がうまくいっているように見えることもあります。その裏で、人も資金も余裕を失っていないか。
私は、こうして消耗しながらも、仕入れを止めにくくなっていくところに、買取再販の難しさがあると思っています。
売上をつくった後、会社に何が残るか
だからこそ、仕入れる前の収支と、終わった後の採算をつなげて見ておきたいのです。
売値が下がったのか。工事や販売にかけた費用が増えたのか。回収までの時間が延びたのか。予定との差が生まれた理由によって、次の仕入れで確かめることも変わります。
その一件で分かったことを、次の収支に入れる。追加の費用や時間まで織り込んでも、買う意味のある案件なのか。そこを見ておかなければ、件数を増やした先でも同じことが起きてしまいます。
そして、案件ごとの利益を積み上げた後に、会社全体の経費も支えていけるのか。資金をどれくらい使い、何件を同時に抱え、社員にどんな負担がかかっているのか。経営者としては、そこまで含めて事業を見たいと思います。
仕入れを見送る判断も、会社に利益を残すための仕事です。
売上の目標に足りないからといって、採算の厳しい物件まで買い続けてしまえば、その後の工事や販売も引き受けることになります。仕入れの時点で、立ち止まれるかは大きいと思います。
私自身、簡単につくった収支と、実際に残る利益の違いを経験しました。その経験があるからこそ、売上の数字が大きくなっても、そこだけでは安心できないのです。
その売上をつくるために、会社は何を使い、いくら残せたのか。
買取再販を続けるうえで、見失いたくない問いです。
和泉に相談
買取再販の売上は増えているのに、見込んでいた利益が残らない。次の売上をつくるために、仕入れを止めにくくなっている。
実際の一件をもとに、仕入れ時の見込みと、その後に出ていった費用を一緒に確認します。利益の計算と、売却までに必要な現金を分け、今の仕入れのペースも含めて、不動産会社の経営者を支援する立場で事業の採算を考えます。
