「いくらで売れるか」から、仕入れを決める。物件とファイナンスの組み方

安く買えそうだ。
それだけでは、仕入れを決められません。

売るまでに何を整え、どれだけ費用をかけるのか。その先に、買ってくれる相手はいるのか。仕入れ値に魅力があっても、ここが曖昧なままでは、会社に利益が残るかは分からないのです。

私は、通常の銀行融資では進めにくい物件でも、最初から検討の対象外にはしたくありません。ただ、資金を用意する方法を探す前に、誰に、どのような状態で、いくらで売るのかを考えます。その見通しが、取得に使える金額や、必要なファイナンスを組み立てる土台になるからです。

不動産業に25年以上携わり、仲介会社を15年経営してきた和泉利明です。会社経営は通算20年。現在は、不動産会社の経営者を支援する立場で、経営や営業、物件と資金の組み立てを支援しています。

今回は、顧問先であった一棟売却の事例も交えながら、売るときの見通しから、買うときの判断を組み立てる話をします。


目次
  1. 一部屋ずつ買うときから、一棟で売る価格を考える
  2. 資金がついても、物件の条件は残る
  3. 誰なら、その物件を使いたいのか
  4. 自分たちで変えられることと、相手の判断が要ること
  5. 購入価格は、その先の費用を引いて考える
  6. 銀行が融資しない。その先に、案件の可能性は残っている
  7. 自社だけで抱えず、案件を動かす組み合わせを考える
  8. 和泉に相談

一部屋ずつ買うときから、一棟で売る価格を考える

顧問先の会社で、地方都市のマンション10戸を一部屋ずつ取得し、まとめて一棟として売却した事例がありました。

ここで大切なのは、一部屋ずつ買う段階から、一棟になったときの買い手を考えることです。

一棟の収益物件を買う投資家は、その建物からどれだけの収益を得られるかを見ます。家賃はいくら入るのか。空室はどのくらいあるのか。管理や修繕にかかる費用を引くと、いくら残るのか。その数字と、求める利回りを照らし合わせて、購入できる価格を考えます。

こうして収益から物件の価値を見るのが、収益還元の考え方です。
国土交通省の説明

例えば、満室なら十分な家賃が入る物件でも、空室が続いていたり、大きな修繕が控えていたりすれば、買い手の判断は変わります。近くの一棟がこの価格で売れたから、こちらも同じ価格で売れる。そこまで単純には考えられません。

一棟にまとめれば高く売れる、と期待して買うのではなく、一棟として評価される根拠から、仕入れを考える。

私がこの事例に面白さを感じるのは、部屋をまとめることで、物件の見方も、買う理由も変わるところです。ただ、顧問先で成立した結果だけを、別の物件に当てはめることはできません。

目の前の物件なら、どんな投資家が、どの収益を見て、いくらで購入を検討するのか。その見通しを立ててから、取得にかけられる金額を考えていくのです。


資金がついても、物件の条件は残る

資金の調達方法が見つかっても、建替えの制限や権利の問題が、それでなくなるわけではありません。買えることと、買ったあとに事業として使えることは、分けて見ます。

再建築不可とされる物件なら、今の建物をどう使えるか、どんな改修が可能か、道路や建築の条件は何かを調べます。所在地の行政窓口や建築士などへの確認が必要です。接道に関する許可・認定にも個別の条件があります。
行政窓口の案内例

安く取得できても、そのあとに必要な工事や管理に費用がかかる場合があります。使い方を決める前に、価格だけで割安だと判断するのは早計です。

お金を用意できるか。その物件をどう使えるか。
片方だけで、買う判断はしない。


誰なら、その物件を使いたいのか

次に考えるのは、利用する人です。今の建物を使う人がいるのか。改修するなら、誰のどんな使い方に合わせるのか。売却するなら、その買い手はどんな条件なら購入できるのか。

近隣で売れている物件と、面積や価格だけを並べても、この違いは見えません。近隣の取引や鑑定評価を手がかりにしながら、利用条件と費用の差を見ます。

買い手が少ない理由が資金だけとは限りません。需要が少ない、維持管理の負担が大きい、権利の調整が必要といった事情もあります。どこが変われば、相手が購入を検討できるのか。そこを具体的にしたいのです。


自分たちで変えられることと、相手の判断が要ること

建物を調査する段取りは、こちらで組めます。でも、隣地を売ってもらうには、所有者の意思が必要です。同じ計画の中でも、こちらで進められることと、相手の判断を待つことがあります。

  • 資料をそろえれば分かること。

  • 費用をかけて改善できること。

  • 関係者の合意が必要で、まだ見通せないこと。

資金計画を組む前に、それぞれがどの段階にあるのかを確かめます。部屋をまとめて一棟として売る計画なら、すべてを取得できるか、途中までの取得にとどまったらどうするかも、先に考えます。

共有や権利関係の調整が必要なら、弁護士などの専門家と対応できる範囲を確認します。話し合えばまとまるはず、という期待を、確定した売却予定として扱わないようにします。


購入価格は、その先の費用を引いて考える

売却価格の見通しが立ったら、そこから工事・調整・保有・資金調達・販売にかかる費用と、会社に残したい利益を差し引き、取得に使える金額を考えます。手間を引き受けても利益が残る価格で買えるか。まず、そこを確かめます。


手間や時間がかかる物件は、その分、検討する会社も限られます。明け渡しを待つ必要がある。権利関係を整理しなければならない。売れる状態にするまで、資金を用意しておかなければならない。

私は、そういう理由があるところにこそ、チャンスがあると思っています。

例えば、古いビルのままでは買い手が限られていても、明け渡しを受け、解体して更地にすれば、土地を使いたい人が検討できるようになる。その間の調整や費用を引き受け、資金をつなぐことで、止まっていた案件が動き出します。

手間をかけ、時間をつなぎ、次の買い手が買える状態にする。そこに、仕事としての価値が生まれる。

買って、そのまま次へ売る取引とは違う面白さがあります。物件が抱えている事情に対して、自社が何をできるか。その仕事によって、売れる相手や価格が変わる可能性があるからです。

もちろん、手間をかければ必ず利益が出るわけではありません。何を解決する必要があり、どれだけの費用と時間がかかるのか。その先に、どんな買い手がいるのかを確かめます。

ほかの会社が見送る理由を、自社なら引き受けられる仕事として考えられるか。 物件の見方とファイナンスを組み合わせる意味は、そこにもあると思っています。


銀行が融資しない。その先に、案件の可能性は残っている

物件を担保に取るのに、会社の業績や余力によって融資がつかない。それなら、担保に取る物件の価値を、もっと見てもらえないのか。 私は以前から、そこに割り切れなさを感じていました。

会社が赤字だから。自己資金に余裕がないから。その事情はあっても、目の前の物件をいくらで取得し、何を整え、誰に売るかまで見えている案件もあります。会社の状況と、その案件に取り組む価値は、同じ話ではないと思うのです。

私が関わっているのは、そうした案件に対して、投資家からの出資を組み合わせ、取得や事業を進める方法です。銀行融資がつかないところで終わらせず、物件の価値と、資金を回収するまでの道筋から、もう一度考えます。

銀行融資を使えない物件は、購入を検討できる会社も限られます。そのため、資金の組み方を用意できれば、競争の激しい市場とは違う条件で取得できる場合がある。ここに、この取り組みの面白さを感じています。

銀行が融資しないことと、その物件で事業が成立しないことは、同じではありません。

ただ、割安に買える、担保があるというだけで、投資家に参加していただくわけにはいきません。売却先があるという話なら、その相手は本当に買えるのか。購入する意思はあるのか。契約の条件はどうなっているのか。そこまで確かめる必要があります。

予定した売却が進まなければ、どう回収するのか。追加の費用や時間が必要になったら、誰が負担するのか。資金を出してくださる方に損失が生じる可能性も含めて、案件を見ていきます。

銀行の判断だけでは拾われなかった物件を、別の資金の組み方で、仕事として成立させられるか。物件の評価、出口の精査、投資家に説明する材料をそろえるところまでが、私の関わる仕事です。


自社だけで抱えず、案件を動かす組み合わせを考える

物件の情報はある。売り方も考えられる。でも、自社だけでは取得資金や実務の体制が足りない。そういうときに、そこで話を終わらせるのは、もったいないと思うのです。

資金を出す投資家、取得して事業を進める会社、権利の調整や工事を担う人、買い手を見つける営業。それぞれが担う仕事を組み合わせることで、取り組める案件もあります。

自社がすべてを引き受ける必要はありません。 物件を見つける力や、売主との関係、地域の知識、販売力。自社が持っている強みを、どこで生かせるかを考えます。仲介や販売を担うことも、その一つです。

ただ、人を紹介してつなげれば、それで進むわけではありません。誰が取得し、どの費用やリスクを引き受け、売却までの実務を進めるのか。それぞれの役割と条件を具体的にする必要があります。

自社に足りないものだけで判断せず、自社が担える仕事から、案件への関わり方を考える。

顧問先に届けたいのは、こうした選択肢です。これまでなら見送っていた物件でも、資金と実務の組み合わせを変えることで、会社の売上や利益につながる仕事になるかもしれない。その可能性を、一緒に探していきたいのです。
私がファイナンスに関わる理由と、顧問として担いたい仕事は、こちらにまとめています。

見送っていた物件を、会社の利益に変える。私がファイナンスに関わる理由


和泉に相談

仕入れを検討している物件はあるけれど、誰にどう売るか、どこまで費用をかけられるかが決めきれない。そんな段階から、物件の資料と、いま迷っている点を聞かせてください。

売却先の見通し、必要な確認や費用、資金の条件を一緒に確かめます。自社で取得するか、仲介や販売で関わるかも含め、会社として取り組める形を考える。経営者向けの個別支援を通じて、仕入れを決める前の検討から関わっていきます。

経営者向け個別支援|経営の判断から実行までのご相談

前の投稿
次の投稿

CONTACT

お問い合わせ

ご相談、ご質問があればお気軽にお問い合わせください。

© Copyright © 株式会社FINIX All Rights Reserved.
【掲載の記事・写真・イラストなどの無断複写・転載等を禁じます】