売上は変動する。期待に応えて増やした固定費は残った

取引先から仕事の相談をもらう。期待してもらっているのだから、応えたい。私も、そう考えて会社の体制を広げていきました。

広告を増やす。人を採る。人が増えれば、事務所も広くする。備品も必要になる。給与に加えて、採用や労務に関わる負担も増えていく。目の前の仕事に応えようとする中で、支払いが次々に増えていったのです。

でも、その支払いをまかなう売上は、毎月同じ金額が入ってくるものではありませんでした。

毎月の支払いは決まっている。売上は、その都度つくらなければならない。この組み合わせが、後になって経営の数字を厳しくしていきました。

会社経営を通算20年経験してきた和泉利明です。今回は、会社を大きくしようとしたときに、私が抱えた難しさを書きます。


目次
  1. 期待に応えるために増やしたのは、人だけではなかった
  2. 売上は、その金額で続くと決まっていなかった
  3. 採用は、年間の計画で動くようになっていた
  4. それでも、あの取引に力を注いだ理由はある
  5. 今後の売上見込みと決まっている支払いを並べる
  6. 和泉に相談

期待に応えるために増やしたのは、人だけではなかった

力のある会社と取引ができる。任せてもらえる仕事が増える。会社の規模を広げようとすれば、そうした機会を生かしたいと思いますよね。私も、相手の期待に応えようとしていました。

そのために、広告を増やし、人も増やしました。ただ、人を増やすという判断に付いてくるのは、その人の給与だけではありませんでした。

人数に合わせて、働く場所も必要になる。事務所が広くなれば、その場所を維持する支払いが増える。備品も用意する。採用するための費用もかかり、人を雇うことで労務に関わる負担も増えていく。

どれか一つだけを見れば、その仕事をするために必要なものです。人を採るなら、働ける場所や道具を用意するのは当然のことですから。

ただ、その当然のことが、会社の中でいくつも重なっていました。一人を増やす判断が、給与以外の支払いも連れてくる。当時の私の会社では、そうした費用が積み上がっていったのです。

備品の購入のように一度の支出で済むものもあれば、毎月続く支払いもあります。すべてが同じ性質の経費ではありません。それでも、会社を広げるときには、給与の増額だけでは分からない負担まで引き受けることになります。
採用の話をするときには、その人が働き始めるまでに何が必要で、その後も何の支払いが続くのかまで、一緒に見たいと思います。


売上は、その金額で続くと決まっていなかった

私がやっていた仕事は、毎月決まった金額が入る仕事ではありませんでした。取引先との関係が続いていても、そこから得られる売上まで、毎月同じように約束されているわけではなかったのです。

一方で、人件費や事務所の費用は、会社を維持するために払い続ける。売上が少ない月だから、その分だけ支払いも小さくなる、という組み合わせにはなっていませんでした。

売上は変動する。固定的に続く支払いは、先に増えている。

振り返ると、ここが苦しかったと思います。増やした体制を維持するために、また売上をつくらなければならない。その売上が想定どおりに入らなければ、経営の数字が厳しくなる。

逆の組み合わせだったら、違ったのではないかとも思います。毎月見込める売上があり、仕事の量に合わせて支出も動く。そういう形であれば、売上が減ったときの負担は違っていたはずです。

もちろん、仕事をするために先に用意しなければならない人や場所はあります。何も決めず、何も増やさずに、仕事だけ増やせるわけでもありません。その順番の難しさがあるのですよね。

だからこそ、今ある売上と、これからも入ると見込んでいる売上を、どこまで分けていたか。過去の自分に対して、そこは改めて考えたいところです。


採用は、年間の計画で動くようになっていた

規模を広げていくと、採用も年間計画に沿って進めるようになりました。そのとき足りない人を一人採る、という話だけではなく、先の体制を考えて採用を進める形になっていったのです。

計画を立てること自体は、会社に必要な仕事です。採用には準備があり、入社した人が仕事を覚える時間もあります。仕事が来てからすべてを始めていては、対応が間に合わないこともあると思います。

ただ、採用の計画を立てても、その計画を支える売上まで確定するわけではありません。

この二つのペースが違うまま、体制は広がっていく。今の私が気になるのは、そこです。一年の計画で人を増やすなら、その間に仕事の量が変わったとき、どこで見直すのかまで考えておきたかったと思います。

たとえば、採用を進める節目で、前提にしていた仕事が実際にどこまで来ているかを確認します。人が足りない状態は続いているか。既存の社員の仕事の分け方で対応できる部分はないか。追加で採用するなら、どんな仕事を任せるのか。

年間計画を、途中で見直すタイミングも決めておく。計画をつくるときに、そこまで決めておく必要があると思います。


それでも、あの取引に力を注いだ理由はある

ここまで書くと、力のある会社との取引に頼らず、もっと別の仕事をしていればよかった、という話に見えるかもしれません。でも、私の中では、そう簡単に片づけられないのです。

会社を大きくしたかった。そのために、力のある会社から仕事を任せてもらう機会を生かそうとした。そこで期待に応えようとする理由は、確かにありました。

当時の自分が、なぜその判断をしたのかは、今も分かります。規模を広げようとするなら、そういう取引を取りにいくのは仕方なかったのではないか、と思う部分もあります。

実際、私の会社では取引先との関係を深めて売上を広げる一方で、依存も高まっていました。コロナ禍で仕事が減ったときには、社員の収入や離職にも影響が出ました。倒産に至った理由は一つではありませんが、売上が変わる一方で支払いが続く形は、振り返っておきたいことです。

相手の期待に応えるために、どこまで先に体制をつくるか。その仕事が予定どおりに来なかった場合、どこまで自社で負担できるか。この両方を並べて考える必要があります。

仕事を取りにいく理由があるからこそ、引き受ける支払いも具体的に見ておく。取引先を増やしましょう、固定費を減らしましょう、という言葉だけでは、当時の私の迷いには届かなかったと思います。


今後の売上見込みと決まっている支払いを並べる

取引が広がるときには、相手から任せてもらえそうな仕事と、そのために増やす体制を、一つずつ並べてみたいです。

まず、売上の見込みです。具体的な依頼が来ている仕事と、今後増えるかもしれない仕事を分ける。相手が期待してくれていることと、自社に入る仕事の量や条件が決まっていることも、分けて考えます。

次に、増える支払いです。採用費、給与、事務所、備品、広告などを並べ、一度の支出で済むものと、その後も続くものを見る。毎月の金額だけでなく、いつから、いつまで支払うことになるかも確認します。

その上で、全部を同じタイミングで増やす必要があるかを考えたい。先に必要なものは何か。仕事の量を確認してから増やせるものは何か。自社の体制で担う部分と、外部に協力を頼める部分はあるか。

外部に頼めばすべて解決するわけでもありません。費用や品質、任せられる範囲を見て決める話です。ここでも、目先の支払いだけで決めず、その仕事をどう続けるかまで考えます。

そして、見込みより仕事が少なかった場合を置いてみる。今の体制をどこまで維持できるか。その間に、別の仕事をつくるための時間や人を残せるか。増やしたあとで困ってから考えることを、少し前に持ってきたいのです。

会社を広げる判断と、増やした支払いを続ける判断を、一緒にする。

力のある会社との取引を生かしたい気持ちは、今も分かります。だから、当時の自分に、ただブレーキをかけたいわけではありません。どこまで広げるのか、その前提が変わったらどうするのか。そこまで話す時間を持っておきたかったと思います。

会社を大きくしたい気持ちと、増えた支払いを背負う難しさ。両方を経験したからこそ、今、同じように迷っている経営者の話を聞きたいのです。


和泉に相談

取引が増えていて、人を採るか、事務所や体制を広げるかで迷っている。相手の期待には応えたいけれど、毎月の支払いが増えることも気になっている。

そんなときは、見込んでいる仕事と、これから引き受ける支払いを並べながら、進め方を一緒に考えます。ご相談は、以下のお問い合わせフォームからお寄せください。

経営者向け個別支援|経営の判断から実行までのご相談

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