部署ごとの話は聞いていました。それでも、後になって問題が出てくる。
会社を経営していた当時、そういうことがありました。
それぞれに担当はある。けれど、その間に、誰も引き受けない仕事が残ってしまう。相手の仕事を軽く見て、自分の仕事ではないと投げてしまう。そういうことも、何度も起きていたのです。
私が見落としていたのは、一つの部署の中だけでは分からない「部署の間の仕事」でした。
会社経営を通算20年経験してきた和泉利明です。今回は、縦割りが進んだ組織で起きていたことと、部署をまたぐ仕事で、何を確かめるかをお話しします。
それぞれの部署に、言い分があった
私の会社では、縦割りが進むにつれて、自分たちがやっている仕事についての主張が強くなっていきました。部署同士の都合がぶつかることもありました。
ただ、それを今、誰かが自分勝手だったという話だけで片づけることはできないと思います。
役割を分ければ、それぞれが自分の部署の仕事をきちんと進めようとする。そこには期限もありますし、動かせる人にも限りがあります。別の部署から何かを頼まれたら、今抱えている仕事をどうするか、という話にもなりますよね。
一方の事情を聞けば、その言い分は分かる。
もう一方の話を聞けば、そちらにも事情がある。
だからこそ、話を聞いた後に何を決めるかが大事だったのだと思います。
両方の事情が分かったところで、仕事の進め方まで決まったわけではありません。
片方の部署だけでは引き受けきれない。それでも、誰かがやらなければ仕事は終わらない。そういう場面で、各部署に任せる範囲と、会社として決めることを分けておく必要がありました。
営業と、契約書を作る側の間で起きていたこと
例えば、営業と、契約書を作る担当との間です。
営業が仕事を持ってくる。そして、契約に向けて、契約書を作る担当へ仕事を渡す。けれど、作成に必要な書類が足りない。私の会社で、そういうことがありました。
その受け渡しには、相手の仕事をどう見ているか、という問題も重なっていました。
営業は、契約書を作る仕事を軽く見ている。
一方で、契約書を作る側も、営業の仕事を軽く見ている。
お互いに、相手がやっていることへの敬意を払えなくなっていたのです。
営業が仕事を持ってくることも、それを契約書にまとめて取引を進められるようにすることも、とても大切な仕事です。それなのに、自分の側から見た言い分が強くなると、相手が担っていることが見えなくなってしまう。
自分の仕事ではないから、相手に投げる。
悲しいですが、そういう仕事の渡し方が、とても多くなっていました。
仕事を渡すときに、相手がそれで動けるかを考えなくなる。
そこに、部署の間で仕事が止まる原因があったのだと思います。
書類が足りないなら、何を、誰が、いつまでにそろえるのか。そこを一緒に考える必要があります。でも、相手の仕事を軽く見ていれば、足りない部分まで相手に任せてしまいやすい。
担当を分けたことで、仕事がつながるはずでした。ところが、その境目が、自分はここまで、と線を引く場所になっていたのだと思います。
話を一つずつ聞くところで止まっていた
部署同士に都合があることは分かります。そのうえで、私自身にも良くなかったところがあります。
こちらの部署ではこういうことが起きている。別の部署は、こういうことを言っている。私は、それぞれを一つずつの話として聞いていました。
でも、その困りごと同士がどう関係しているのか、仕事がどこで途切れているのかまでは、つかめていなかったのです。後から問題になり、そこで初めて分かることもありました。
全体を把握するのは、難しかったです。だからといって、人数が増えたから仕方がない、で済ませられる話でもありません。
話を聞いていたことと、仕事の全体をつかめていたことは違いました。当時の私には、その見方が足りませんでした。
今振り返るなら、社員にもっと報告してもらうことだけを求めるのは違うと思います。書類が足りない、相手がやってくれない、という話の奥で、互いの仕事をどう見ているか。私が確かめるべきことは、そこにもありました。
こうした行き違いがあるときは、双方に同じ一件の仕事を見てもらいます。それぞれがどこで苦労し、相手に何を求めているのか。個別の言い分を聞いた後に、そこまで確かめます。
相手が何を担っているかから確かめる
まず、営業と契約書を作る側の双方に、実際の一件をもとに話してもらうことからスタートします。
営業は、お客様と何を確かめ、どの条件まで決めてきたのか。
契約書を作る側は、何を確認しなければ作業を進められないのか。
どこに時間がかかり、何が足りないと困るのか。
必要書類の一覧を渡して、それで分かったはず、とは考えません。その書類がなぜ必要で、そろわないと何を確かめられないのかまで、作る側から伝えてもらいます。営業側にも、お客様とのやり取りで確認しづらいことや、すぐにはそろわない事情があれば話してもらいます。
相手の仕事に敬意を払うためにも、何を担い、どこで苦労しているかを知る。そこに大きな時間を使うことです。
そのうえで、不足している書類は誰がそろえるのか、確認できていないことは誰が聞くのかを決めます。自分の担当から外れたことでも、必要な仕事なら、引き受ける人を決めるところまで話します。
ただ、お互いの苦労を知っただけでは、仕事はまだ進みません。
私が確かめたいのは、その内容で次の人が動けるかです。
情報が足りないのか。判断を待っているのか。それとも、内容は分かっていても、手が空いていないのか。同じ「止まっている」でも、理由によってやることは変わります。
情報の不足なら、誰が何を確認するかを決める。判断を待っているなら、誰がいつまでに答えを出すかを決める。手が足りないなら、仕事の順番や人の配置を考える。
担当を決めた後も、実際に次の人が動けたかまで確認します。
相手への敬意を、仕事の渡し方にも表す。そこまでを一緒に見ます。
都合がぶつかったとき、何を決めるか
事情が分かっても、すぐには解決できないこともあると思います。急いで進めたい部署と、今の仕事で手いっぱいの部署があれば、両方の希望をそのままかなえるのは難しい。
そうなった時は、まず待たせた場合に何が起きるかを確かめます。お客様への約束に影響するのか。別の仕事まで止まるのか。今の予定を変えると、今度は誰に負担がかかるのか。
急いでほしいと言われたから、その仕事を先にする。それでは、別の部署に無理が移るだけかもしれません。今すぐ進める理由と、順番を変えた場合の影響を見て判断します。
部署の責任者同士で決められることは、そこで決めてもらう。それでも折り合わないときは、何を先に進め、何を待ってもらうかを決める。そこは、社長が引き受ける判断だと思います。
全員の希望をかなえられないときこそ、何を優先するかを決める。その理由まで伝えるところが、経営者の仕事だと思います。
優先順位を変えれば、予定を組み直す人がいます。
支援する人を出せば、その部署にも影響が出ます。
決めた理由を伝えたうえで、残る仕事をどうするかまで話しておきます。
一方で、間に残った作業を、社長が毎回すべて引き受ける形にもしたくありません。それでは、社長の手が空くまで止まる仕事が増えてしまいます。
誰が作業を進め、どこで判断が必要になったら誰に戻すのか。
そこを決めて、関係する人が動けるようにする。
報告を受けた後にもう一歩聞く。受け取る人が困らないように、どこまで準備して渡したのか。相手の仕事について、分からないまま決めつけていることはないか。仕事の受け渡しと、お互いの仕事の見方。その両方を確かめます。
和泉に相談
部署ごとの報告は受けているのに、後から問題が出てくる。担当を分けたはずなのに、仕事が途中で止まってしまう。
そんなときは、実際に止まった一件をもとに、双方が何に困り、相手に何を求めているかを一緒に整理します。部署をまたぐ仕事の担当と判断する人を確かめ、次に動けるところまで考えます。
