会社を閉めるためにしていた片づけが、次の仕事の準備になりました。
書類を整理していたら、昔、社員に伝えるためにつくった研修資料が、いろいろ出てきたのです。懐かしさも手伝ってか、時間を忘れて読みふけったのを覚えています。
営業のこと。仕事の進め方。そして、人としてどうあるか。
そこには、社員にどうなってほしかったのかという、当時の自分の考えが残っていました。改めて読み返すと、感慨深いものがありました。
その資料を整理し直し、生徒さんや別の会社の方とのワークで使いながら、内容を変えていきました。トライアンドエラーを繰り返し、自分なりに形にするまでには2年ほどかかったと思います。
以前、自分の社員に伝えていたことが、今度は、別の会社の人と学ぶための教材になりました。
不動産業に25年以上携わり、仲介会社を15年経営してきた和泉利明です。会社経営は通算20年になります。現在は、不動産会社の経営者を支援する立場で、経営や営業の実務を支援しています。
今回は、以前の会社で社員に伝えていたことが、今の仕事にどうつながっているかをお話しします。
目次
売れれば、褒めてもらえた
営業の仕事に手応えを感じた理由は、すごく単純でした。
売れれば、人に褒めてもらえる。
私は、勉強ができたわけでも、何かが優秀だったわけでもありません。人から褒められることも、あまりありませんでした。そんな自分でも、売上を上げれば認めてもらえる。
私には、それが大きかったのです。
今は、営業はお客様に価値を提供する仕事だと考えています。でも、最初からそんなふうに整理していたわけではありません。売れたら褒めてもらえる。私のスタートは、それくらいシンプルでした。
やがて会社を経営し、社員に仕事を伝える立場になりました。自分でやっていることを、ほかの人にも伝える。そうなると、自分がどう考えて仕事をしているのかを、言葉にする必要が出てきます。
不動産や営業については、かなり言語化していた方だと思います。営業の考え方も、仕事の進め方も、自分なりに伝えてきました。会社を閉めるときに出てきたのは、そのためにつくっていた資料だったのです。
社員に伝えていたのは、人としてどうあるか
もちろん、売り方の話もしていました。ただ、社員に伝えていたことを振り返ると、核になっていたのは、人としてどうあるかという部分でした。
相手にどう接するか。どんな配慮をするか。自分の仕事を進めるときに、周りの人のことも考えられているか。
お客様の前だけ丁寧にしていても、普段の言葉遣いや接し方は、どこかで出ると思うのです。同僚や先輩への接し方、相手がしている仕事への敬意。そういうことを、私はすごく伝えていたと思います。
だから、営業だけの話にはなりません。事務でも、管理する立場でも、自分の仕事の先には相手がいます。スタッフ全員で考えることでした。
研修はこまめに行っていました。みんなで学び、ワークをする。社員旅行にもよく行きました。仕事を指示して、終わったかを確認するだけではない時間を、一緒に過ごしていたのです。
何ができるようになってほしいか。
その手前に、どんな姿勢で人に接してほしいかがありました。
教える側として伝えるだけでなく、みんなで一緒に学ぶ。そのための機会も、繰り返しつくっていました。
一度話せば、全員に同じように伝わるわけではありません。相手の受け取り方や、伝え方の難しさもありました。それでも、仕事のやり方を教えることと、人への向き合い方を伝えることは、私の中でつながっていたのだと思います。
売れない社員の相談が、次の仕事のきっかけになった
仕事を受け始めたきっかけは、以前から不動産の仕事でつながっていた方からの相談でした。売れない社員の相談に乗ってもらえないか、という話だったのです。
ただ、その依頼をいただいたときは、不安もありました。
会社を倒産させてしまった自分が、人に教えることができるのだろうか。
営業の経験はあります。社員に仕事を伝えてきた経験もある。それでも、会社を続けられなかった自分が、別の会社の社員に何を伝えられるのか。そこには、迷いがありました。
一方で、そんな自分にも相談してくれる人がいる。自分を求めてもらえたことは、素直に嬉しかったのです。
嬉しい。でも、自信を持ちきれない。
そんな気持ちが入り混じっていました。
会社を閉める中で、昔の資料を読み、自分がしてきたことを振り返る時間もありました。社員に何を伝えようとしていたのか。どんなふうになってほしかったのか。そこには、自分が長く考えてきたことが残っていました。
この経験をもとに、伝えられることはあるのではないか。
そう思えたことと、求めてもらえた嬉しさが、依頼を受ける後押しになりました。不安も抱えながら、以前は自分の社員に伝えていたことを、別の会社の方にも伝える仕事を始めたのです。
昔の言葉を、今の仕事で使える形にする
ただ、出てきた資料は、きれいに整理されたものではありませんでした。
その時々の朝礼で使っていた言葉。社員に伝えるためにまとめたこと。今の仕事につながるものもあれば、直接は関係のないものもある。まずは、その整理からでした。
自分の会社だから使えていた内容もありました。それを、別の会社の人と学ぶためのものにするには、何を残し、どう伝えるかを考え直す必要があったのです。
それに、読み返している私自身の考えも変わっていました。
15年も会社を経営していれば、当時と今で、考えが大きく変わっていることもあります。昔、自分が書いたからといって、今もそのまま伝えたいとは限らない。手法や仕事の進め方は、時代に合わせて見直しました。
一方で、相手への思いやりや配慮、人としてどうあるかという部分は、そんなに変わっていません。
残したい考え方と、変える必要のある手法。
同じ資料の中に、その両方がありました。
昔の自分が書いたことを、今の自分で確かめ直す。
教材づくりと並行して、生徒さんや別の会社の方とのワークでも使っていました。実際に使いながら、内容を変える。また使う。その繰り返しで、教材をブラッシュアップしていったのです。
使いながら、つくっていった2年間でした。
資料には、その時点で考えていたことが書いてある。私には、それを伝えた後の経験もある。その両方を持って内容を見直してきたことが、今の仕事のベースになっています。
人への伝え方と、会社の仕組み。両方に関わっていく
営業の相談を受ける中で、会社の仕組みづくりをお手伝いすることもありました。
私が関わってきた不動産会社の中には、昔からのやり方を続けている会社もありました。日々の案件は動いていても、仕事の仕組みを整えたり、社員に権限を渡したりするところには、あまり手がついていない。
例えば、社員に仕事を任せても、どこまで自分で判断してよいかが分からなければ、そのたびに社長へ確認することになります。本人にやる気があっても、判断するための材料がなければ、止まってしまうのです。
そういう状態で、本人にもっと頑張ってもらうことだけを求めても、難しいですよね。
社員の力を伸ばすことと、その力を発揮できるように仕事を整えること。
両方を考える必要があると思っています。
権限移譲も、育成も、仕事の進め方も、私自身が会社を経営する中で向き合ってきたことです。うまく任せられなかった経験もありますから、こういう相談は他人事ではありません。
打ち手をお伝えしたり、実際の仕組みを一緒につくったりする。自分の経験を、そういう形で使うこともできました。
人に伝えることと、その人が働く会社の仕組みを整えること。
私の仕事は、その両方に関わるようになっていきました。
もちろん、以前の会社のやり方を、そのまま持っていけばよいとは思っていません。人数も違えば、誰が何を担っているかも違います。目の前の会社では、どう進めると仕事がつながるか。そこを一緒につくっていくことも、今の私の仕事です。
社員に伝えていたことが、営業塾やnoteにつながっている
こうした経験から、不動産営業塾として人に教えるようにもなりました。このnoteで、営業や経営について書いていることにも、同じ背景があります。
売れるかどうか。人にどう伝えるか。仕事をどう任せるか。自分が会社を経営し、社員と仕事をしてきた中で考えたことを、今は別の会社の人たちと一緒に考えています。
会社を倒産させてしまったことは、私にとって大きな失敗です。でも、社員に伝えようと考えてきたことや、そこで経験したことには、次の仕事で使えるものもありました。
もともとは、売れれば褒めてもらえることが大きくて、続けてきた営業です。そこから、社員に教える立場になり、今はほかの会社の育成や仕組みづくりに関わっている。
会社を閉めるために整理していた研修資料を、今度は、別の会社の人を育てる仕事に使っている。
以前、社員にどうなってほしいと思っていたのか。その思いを出発点に、次に相談してくださった方へ、何を伝えられるかを考える。
会社を閉めるための片づけは、そんなふうに、今の仕事につながっていったのです。
和泉に相談
営業の育成がうまく進まない。仕事を教えているけれど、社員への伝え方で悩んでいる。任せたい仕事が、結局、社長に戻ってきてしまう。
実際にどんなことが起きているかからお聞きします。自分で営業をしてきた経験と、会社を経営してきた経験をもとに、社員の育成や仕事の進め方づくりを、法人向け研修を通じてお手伝いします。
