次の打ち手は、お客様が教えてくれる

次に何を売るか。どんなサービスを増やすか。他社とどう違いをつくるか。

会社の中で考え始めると、なかなか答えが出ないことがあります。けれど、すでに買ってくださったお客様や、今回は買わなかったお客様の話を聞くと、考えてもいなかった理由が出てくる。

そこに、会社が次に取り組むことのヒントがあると思うのです。

私は、お客様の声が最強だと思っています。

買ってくださる方だけではありません。買わなかった方も、使い続けている方も含めてです。会社が伝えようとしていた価値と、お客様が感じていた価値が、同じとは限らないからです。

会社経営を通算20年、不動産業に25年以上携わり、仲介会社を15年経営してきた和泉利明です。現在は、不動産会社の経営者を支援する立場で、経営や営業の実務を支援しています。

今回は、3社の実例を交えながら、お客様の声から会社の可能性をどう見つけるかを考えます。


目次
  1. ワークマンの作業着を、ライダーが買っていた
  2. お客様が牛乳を入れていた。それが商品になった
  3. 欲しくないのか。それとも、置けないのか
  4. 売れた、売れなかった。その先の話を会社に残す
  5. 競合を見る前に、お客様の話を聞きたい
  6. 和泉に相談

ワークマンの作業着を、ライダーが買っていた

ワークマンの防水防寒ウェア「イージス」は、もともとプロの仕事を支える商品でした。それが、バイクに乗る人たちの間で口コミによって広がったと、同社は紹介しています。ライダー向けの「レインスーツBIKERS」や、釣り向けの「イージスオーシャン」も展開しています。(出典:ワークマン公式「ワークマンについて」)

仕事の現場で雨や寒さから身を守る機能は、バイクに乗る人にとっても役に立つ。売る側が考えていた用途の外で、お客様が価値を見つけていたのですね。

この事例で私が面白いと思うのは、まったく別の商品をゼロから考える前に、すでに買っている人を見ることで、新しいマーケットが見えてくるところです。

何着売れたかだけでは、仕事で着るために買ったのか、休日のツーリングに使うのかは分かりません。同じ一着でも、買う理由が違う。そこが分かれば、伝える相手も、プレゼンの中身も変わってきます。

自社の強みを、会社より先にお客様が見つけていることがある。

中小企業でも、これは考えられると思います。いつもと違う業種から問い合わせが来た。想定していなかった使い方で、繰り返し注文が入る。そんなときに、珍しいお客様だった、で終わらせたくないのです。


お客様が牛乳を入れていた。それが商品になった

日清食品の「カップヌードル ミルクシーフード」は、シーフードヌードルをホットミルクで作るとおいしい、というネット上の口コミをきっかけに開発され、2007年に発売されました。同社の公式発表で、その経緯が紹介されています。(出典:日清食品の発表)

買った後に、お客様が自分なりのアレンジをしていた。その楽しみ方が、新しい商品のきっかけになったわけです。

お客様の声というと、不満や改善の要望を集めることをイメージしやすいと思います。でも、こういう楽しみ方をしている、こんな工夫をして使っている、という話もある。

売れたところで話が終わると、その先で生まれた価値を聞き逃してしまう。

これは、サービスを提供する会社にも通じる見方だと思います。納品した資料を、別の仕事でも使っているかもしれない。こちらが少し手伝ったことが、実は一番助かったと言われるかもしれない。

何に満足しましたか、と聞くだけでは出てこない話もあります。実際にどんな場面で使ったのか。自分で付け足したものはないか。使い始めてからの話を聞くと、会社がまだ商品やサービスにしていない価値が見つかる可能性があります。

新しいアイデアを社内でひねり出そうとする前に、お客様がすでにやっていることを見てみる。それも、次の商品を考える入口になるのだと思います。


欲しくないのか。それとも、置けないのか

パナソニックの食器洗い乾燥機「SOLOTA」も、考える材料になります。同社は、一人暮らしの住まいでは、従来の食洗機は大きくて置けないことが導入の障害だったと説明しています。

SOLOTAは、ほぼA4ファイルサイズのスペースに置ける設計で、分岐水栓の取り付け工事も不要。サイズや設置のハードルに対応した商品です。(出典:パナソニック公式の紹介)

この事例から考えたいのは、買っていない人を、必要としていない人だと見てよいのか、ということです。

置く場所がないなら、便利さを何度説明されても買えません。値段を下げても、台所は広くならないですよね。

商品の魅力が足りないのか。使える条件がそろっていないのか。
そこでは、会社が変えるものが違います。

例えば、使い始めるための準備が大変で、導入を見送っているお客様がいたとします。その場合は、本体の機能を増やすより、導入をサポートするサービスの方が役に立つかもしれません。

なぜ買わなかったのかを聞く意味は、次の商談でうまく説明するためだけではありません。売っているものや、提供する範囲そのものを見直す材料になる。そこまで考えると、買わなかった方の声も、経営にとって大きな意味を持つと思います。


売れた、売れなかった。その先の話を会社に残す

3つの事例を見て、私が考えるのは、お客様の話をどこで終わらせるかということです。

購入の理由が、自社の想定とは違っていた。
買った後に、お客様が独自の工夫をしていた。
必要性は感じていても、使えない事情があった。

どれも、売上の数字だけを見ていたら分かりません。

営業担当者が聞いていても、会社に上がってくる報告が、受注した、失注した、だけなら、そこにあったヒントは担当者の中に残ったままです。

お客様の言葉を、結果の一言にまとめすぎないことも大切だと思います。

例えば、価格が合わなかったという報告でも、何と比べて、どの部分を高いと感じたのかで意味は変わります。必要のないサービスまでセットになっていたのか。導入後にかかる費用が読めなかったのか。それとも、そもそも使う機会が少なかったのか。

そこまで分かれば、値下げ以外にも、プランを分ける、費用の示し方を変える、利用頻度の低い方に別の提供方法を用意する、といった検討ができます。

一人の声で全部を変える必要はありません。ただ、その話を例外として片づけず、似た事情を持つ方がほかにもいないかを確かめる。そのうえで、一つ変えて反応を見ればよいと思うのです。

大きな新規事業でなくても構いません。サービスの一部を分けて提供する。使い始めるところまでサポートする。すでに評価されている仕事を、別のお客様にも知っていただく。そうした取り組みも、会社の次の打ち手になります。


競合を見る前に、お客様の話を聞きたい

他社が新しいサービスを出した。広告を増やした。価格を下げた。

経営していれば、気になりますよね。ただ、そこばかり見ていると、次に考えることも、他社に合わせたものになりやすいと思います。

一方で、自社のお客様が何に困り、何を評価し、どんな使い方をしているかは、日々の接点から聞ける話です。小さな会社でも、直接話せる相手はいます。

その声を聞くために、必ずしも大がかりなリサーチから始める必要はありません。最近買ってくださった方に、使ってみてどうだったかを聞く。今回は見送った方に、差し支えない範囲で理由を教えていただく。現場の担当者が気になった一言を、経営者も一緒に考える。

私が「お客様が答えを持っている」と思うのは、自分たちがまだ知らない、選ぶ理由や選ばない理由を持っているからです。

お客様は、次の商品を企画してくれるわけではありません。でも、何に困り、何に価値を感じるかは、お客様が知っています。

そこから何をつくり、誰に届けるかを考えるのが、会社の仕事なのだと思います。


和泉に相談

他社と似た提案が増えている。自社が何を評価されているのか、うまく言葉にできない。次のサービスを考えたいけれど、社内のアイデアだけでは決めきれない。

そんなときは、実際のお客様の声や、選ばれた理由、見送られた理由から、一緒に整理します。経営者向けの個別支援を通じて、今ある仕事の中から次に取り組むことを考えます。

経営者向け個別支援|経営の判断から実行までのご相談

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