営業は、仕事の時間の7割くらいを、お客様に会ったり、提案したりすることに使っている。
私は、そんなイメージを持っていました。
ところが、実際に調べてみると、約7割を占めていたのは事務作業でした。
7割は営業の時間だと思っていたら、7割が事務だった。
これは、結構衝撃的でした。営業は、お客様に価値を提供するためにいる。その仕事に使える時間が、私の想像とまるで違っていたのです。会社として、危機だと感じました。
ただ、仕事を分け直せば、それで営業の動きも変わる。そんなに簡単ではありませんでした。
不動産業に25年以上携わり、仲介会社を15年経営してきた和泉利明です。会社経営は通算20年になります。現在は、不動産会社の経営者を支援する立場で、経営や営業の実務を支援しています。
今回は、当時の自社で時間の使い方を調べた経験を書きます。
目次
売れる人の共通点を、本人の中に探していた
仲介会社を経営していた頃、売れる営業には何か共通点があるはずだと考え、調べたことがあります。
トークがうまいのか。対応が速いのか。成果を出す人の特徴を知り、育成につなげたかったのです。
ところが、仕事を営業、事務、その他に分けてみると、事務作業が約70%。当時の私の会社では、SUUMOへの入稿、写真の対応、書類の準備なども営業が担っていました。
一つひとつは必要な仕事です。ただ、それを合わせると、一日の大半を占めていた。そこまでは、見えていなかったのです。
営業に売上を求めながら、営業に使う時間を会社が少なくしていなかったか。
本人の営業力を知ろうとしていた私に、会社の仕事の任せ方が見えてきました。
残りの3割で売れているなら
特にもったいないと思ったのは、売れる営業の時間です。
例えば、勤務時間の3割を営業に使い、その中で成果を出している人がいたとします。その時間を6割にできれば、もっとお客様に向き合えるのではないか。
時間が倍になっても、売上がそのまま倍になるとは限りません。それでも、すでに売る力がある人の時間を増やせれば、売上を伸ばせる可能性はあると思いました。
お客様と話す。相談を受けたことを調べる。提案を準備し、もう一度お伝えする。会っている時間以外にも、営業として手をかけたい仕事はあります。
今いる人の力を、会社はどこまで生かせているのか。
そこに、社内の分担を変える意味を感じたのです。
巻き取れる仕事を、営業から外していった
そこで、営業が抱える事務作業のうち、巻き取れる部分を巻き取り、営業の時間を確保するように努めました。
進め方をそろえれば、営業以外の人でも担える仕事はあります。そうした部分を整理し、事務の担当者に担ってもらうという考え方です。
当時、SUUMO入稿を営業から外した後、事務作業の割合は約40%になりました。
7割から4割へ。時間の配分は変わりました。ただ、入力以外にも、書類の準備や情報の確認などの仕事は残っていたのです。
残った事務作業についても、お客様と決めたことや取引条件など、営業が責任を持って確認する部分があります。そこまで丸ごと渡すわけにはいきません。
営業が判断することと、決まった内容を作業にすることを分ける。
そのうえで、入力や書類の準備を事務の担当者が支えれば、営業は提案に時間を使えるようになります。直接契約を取る人だけでなく、その時間をつくる人も、会社の売上を支えているのだと思います。
もちろん、渡した先に無理が集中すれば、そこで仕事が止まります。相手が引き受けられる量や、作業に必要な情報も含めて分担を考える。
営業が営業の仕事に専念できる状態を、チームでつくる。
こうしたサポートが、営業のパフォーマンスにつながると考えていました。
仕事は減らせても、何年もの習慣はすぐに変わらない
ただ、実際に分担を変えてみると、難しいことがありました。
対象になったのは、その働き方を何年も続けてきた社員たちです。営業をしながら、事務作業も自分で進める。それが普段の仕事になっていました。
もう、板についていたのです。
事務作業を減らせば、お客様に連絡する時間ができる。提案にも手をかけられる。本人の気持ちにも、余裕が生まれるはずだと考えていました。そういう余地は、確かにあると思っています。
でも、何年も続けてきた仕事の進め方は、なかなか変えられませんでした。
時間を空けることと、その時間で営業の動きが変わることは、別だったのです。
ここが、やってみて難しかったところです。会社が仕事の分担を変えたからといって、本人の一日の使い方まで、すぐに切り替わるわけではありませんでした。
その働き方を長く続けてもらっていたのは、会社でもあります。私も、その状態で仕事を任せてきました。そこから変えようとするなら、仕事の量だけでなく、本人に身についている仕事のリズムも見なければいけなかったのだと思います。
営業の時間を確保する意味はある。けれど、空いた時間をどう使うかまで、一緒に考える必要がある。
連絡したかったお客様がいるのか。準備が足りていない提案があるのか。時間をつくった先で何に取り組むかを、具体的にする。分担の見直しには、そこまで含める必要があると感じています。
採用の前に、任せない仕事も決めておく
この経験から、新しく社員を迎えるときは、入社する前の準備も大切だと考えるようになりました。
まず、既存の社員が一日のどの時間に、何をしているかを把握する。お客様への対応に時間を使えているのか。入力や書類の準備が、どのくらいを占めているのか。そこを見ておけば、新しい人にそのまま渡してよい仕事かも考えられます。
営業に任せないと決めた仕事は、入社する前に巻き取っておく。
最初は全部やってもらい、後から分ければよい。そう考えたくなる場面もあると思います。でも、その状態が何年も続けば、変えること自体が難しくなる。私は、それを経験しました。
入力や資料の準備を誰が担うのか。営業はどこまで情報をそろえ、何を確認するのか。受け取る側も無理なく動けるようにしてから、新しい人を迎える。そうした準備ができれば、入社した人も、お客様への連絡や提案に時間を使う働き方を身につけやすくなるのではないかと思います。
採用するときは、どんな能力を持った人に来てほしいかを考えます。その人の力を、どんな仕事に使ってもらうかも、同じように考えておく。
入社してから頑張ってもらう。その前に、営業として頑張れる時間を用意できているか。
7割が事務だと知ったときは、まず仕事を減らさなければと思いました。分担を変える中で、長く続いた働き方を変える難しさも知りました。
だからこそ、営業に何を任せるかは、採用した後に考え始めるのでは遅いこともある。新しい人を迎える前に、今いる人の時間の使い方から見ておく。この経験から、私が大切だと感じていることです。
和泉に相談
営業はいつも忙しいのに、お客様への連絡や提案が後回しになっている。新しく人を採用しても、同じ仕事の抱え方になってしまう。
そんなときは、今いる社員が何に時間を使っているかから、一緒に確認します。営業に残す仕事と、ほかの人が支えられる仕事を分け、その先でどんな動きを増やしたいのかまで考える。経営者向けの個別支援を通じて、採用前の準備も含めた仕事の分担をお手伝いします。
