売却できれば利益が出る。その見通しがあっても、買う日に必要なお金が足りなければ、取引は始まりません。
自己資金で買える場合も、そのお金は回収するまで別の仕事に使えなくなります。一件の利益を見ていたら、会社全体では次の仕入れに使うお金が薄くなっていた。そうならないために、私は、資金が戻るまでの時間を見たいのです。
会社経営を通算20年、不動産業を25年以上経験し、仲介会社を15年間経営してきた和泉利明です。現在は、不動産会社の経営者を支援する立場で実務を支援しています。今回は、取得から回収までを、会社の資金の動きとして考えます。
目次
取得する日と、回収する日は違う
売却先が見えていても、その相手から先に代金を受け取れるとは限りません。まず取得し、必要な仕事を終え、それから売却する順番なら、その間の資金が必要です。
身近な商売に置き換えるなら、弁当を100個注文してもらい、代金は納品後に受け取る場面です。注文があっても、材料は先に買わなければなりません。売れる見通しと、先に払うお金は別に用意する必要があるわけです。
その材料代を一時的に外部資金で用意するなら、代金がいつ入るか、そこから返済しても利益が残るかまで考えます。不動産でも、先に出る支払いと後から戻る代金の間を、金額と期間の両方でつなぎます。
私が関わった案件にも、親会社への売却を見込めていても、子会社が先に取得する資金を用意できずに止まっていたものがありました。売り先を探すことと、先に買うお金を用意することは、別の仕事なのです。
こうした案件に関わる理由は、ファイナンスの主記事にまとめています。
見送っていた物件を、会社の利益に変える。私がファイナンスに関わる理由
三為で考えていた案件を、自社で取得する選択肢
不動産の取引には、売主A、中間の事業者B、最終買主Cが関わり、第三者のためにする契約を使って、所有権をAからCへ直接移す方法があります。いわゆる三為です。所有権の移転と代金の支払い方は、契約に沿ってそれぞれ決まります。三為契約の解説
ここで私が考えたいのは、間にいるBが取得資金を用意できた場合です。自社でいったん取得し、必要な仕事をしてから販売する選択肢を持てます。最終買主が買うタイミングと、自社が仕入れるタイミングを分けて考えられるようになるのです。
ただ、BとCの話はまとまっています、と聞いても、そのまま安心はできません。出口があるように見える話も、結構あるのです。
Cは本当に買う意欲があるのか。代金を用意できる相手なのか。BとCの間では、どんな内容で契約しているのか。売り先がいるという説明から、そこまで精査します。
買う相手の名前があることと、その相手から代金を回収できることは、同じではありません。
その確認が甘いままでは、資金をつないでも回収できなくなる可能性があります。私が出口を見るときには、売却予定の価格だけでなく、買主と契約の確かさまで含めて考えています。
三為か、自社で取得するかは、資金だけで決めるものではありません。取得に伴う税や登記の費用、保有中の負担、売却までの時間も変わります。その違いを比べたうえで、自社で持つことでできる仕事が増えるかを見ます。
私は、資金がないから取引の方法が限られている案件に、もう一つ選択肢をつくりたいと思っています。
立ち退きの合意から売却まで、待つ時間を支える
建物を取得し、入居者との合意を経て明け渡しを受け、更地として売却する計画もあります。この場合、買った翌日に更地として販売できるわけではありません。
私が資金計画で考えるのは、住居なら半年、店舗なら一年といった期間が必要になるケースです。ただし、これは一律の目安でも、退去してもらえる期限でもありません。契約や相手の事情で期間は変わり、合意に至らない場合もあります。
立ち退きは、借主の権利を踏まえ、必要に応じて弁護士などの専門家と進める仕事です。立退料を用意すれば必ず明け渡してもらえる、と資金計画に置くことはできません。東京都の相談事例
更地としての売却見込みから、取得費、立退きに伴う費用、解体費、保有費、調達費用などを引き、利益が残るかを見る。そして、合意や明け渡しが遅れた場合の期間と支出も置きます。
その間に自己資金が長く寝てしまうなら、外部資金を組み合わせる意味があります。時間をかけて物件の状態を変える仕事と、その時間を支える資金を、一緒に考えるのです。
土地を買ってから、事業が動くまでの時間もある
例えば、蓄電池事業では、土地を取得したあとに設備を整える期間があります。土地代を払った日から、事業として資金を回収できる日まで、支出が先に続くことがあります。
その計画で、いつ、何の支払いがあるのか。設備が完成する時期と、売却や運用によってお金が戻る時期を、同じものとして扱わずに並べます。
ここで外部資金を組み合わせるなら、使える金額だけでなく、使える期間が合うかも見ます。設備や販売の準備が整う前に返済期限が来る計画では、必要な仕事を終える前に、次の資金が必要になってしまいます。
私は、ファイナンスを考えるときに、このタイムラグを埋める役割も大切にしています。資金の条件と事業の予定が合うことで、進められる仕事があるからです。
一件の資金と、会社に残す資金を分ける
物件の取得代金、工事費、税や管理費、金利、手数料、返済。必要な支払いを、入金の予定と同じ表に置きます。
そこへ、会社の毎月の支払いや、すでに動いている別の案件も重ねます。次の仕入れに残したいお金まで同じ案件に使うなら、その取引の利益だけでは決められません。
外部資金を使う費用と、自己資金を使った場合にできなくなる仕事。その両方を比べます。手元の現金を残せても、調達費用で採算が崩れるなら進め方を変える必要があります。
また、買い手が限られる物件を割安に取得でき、坪単価で見ても担保としての価値が見込めることはあります。ただ、それでも損失がなくなるわけではありません。物件の割安さだけで、予定どおり回収できると考えず、実際の出口と、その時期を合わせて見る必要があります。
売れたときにいくら残るかと、売れるまで会社にいくら残しておくか。二つの数字を並べて考えます。
延びたときに、最初に足りなくなるものは何か
予定より工事が遅れる。買主の準備に時間がかかる。売却の話が進まない。期間が延びたときには、増える費用だけでなく、いつ支払えなくなるかを見ます。
例えば、回収が三か月延びる仮定を置くなら、その間の支出と入金を書き直します。返済期限をまたぐなら、いつまでに誰へ相談する必要があるかも決めます。
延長や借り換えは、相手の判断が必要です。応じてもらえる前提で資金表を埋めず、契約条件と、相談を始める時期を先に押さえます。
価格を下げる、工事の範囲を変える、取得そのものを見送る。選択肢が残っているうちに判断するために、資金の予定をつくるのです。
資金を出してくださる投資家の方に、こちらの確認が甘かったことで迷惑をかける形にはしたくありません。取得できたところで終わらず、回収までを考える。その責任も含めて、ファイナンスに関わっています。
和泉に相談
先に取得するための資金が用意できない。売却の見通しはあるけれど、回収まで自己資金を寝かせるのは厳しい。
そうした案件があれば、物件の資料と、今どこで検討が止まっているのかを聞かせてください。必要な金額と時期、買主や契約の状況、回収までにかかる費用を一緒に整理します。
案件の採算と、会社に残す資金の両方を見ながら、どんな進め方が考えられるか。経営者向けの個別支援を通じて、資金の組み方と、その先の実務まで一緒に考えます。
