挨拶ができなかった人が、自分から挨拶するようになった。声の出し方や目つきが変わり、同僚や先輩への接し方も変わってきた。
それでも、今月の契約はゼロ。営業を育てるときには、こうした場面をどう受け止めるかが難しいですよね。
会社として売上は必要ですし、本人にも早く結果を出してほしい。ただ、私が見たい成長は、お客様を担当してから始まるものだけではありません。その手前にある、言葉や行動の変化も見ておきたいのです。
和泉利明です。私は仲介会社を経営する中で、売上に加えて、案内や追客などの過程も見てきました。成長の目安を本人と決め、3か月ごとに面談や評価の見直しをする取り組みも行っていました。
今回は、数字になる前の変化をどう見つけ、その人の次の仕事へつなげていくかを書きます。
目次
お客様を担当する前から、成長は始まっている
営業の成長を考えるとき、問い合わせが入るところを1として、接客、案内、提案と進み、契約を10とする。そういう分け方もあります。
でも、それは案件が進む順番なのですよね。私が今回お伝えしたいのは、その仕事をする本人が、どう変わっているかという話です。
たとえば、挨拶です。以前はできなかった挨拶ができるようになる。声の大きさや、話すときの目つきにも変化が出る。いわゆる「目の色が変わった」と感じるような、仕事への向き合い方の変化もあります。
同僚にどんな言葉をかけるのか。先輩に教わるとき、どう受け止めるのか。自分の用件だけを伝えるのか、相手の都合にも気を配れるのか。私は、そういう日々の接し方にも、その人の成長が表れると思っています。
売上を上げたいという気持ちは大事です。でも、それだけでは、目の前の相手への思いやりや配慮は伝わりません。自分がどうしたいかに加えて、相手がどう受け取るかを考えられるようになる。その変化を見たいのです。
まだお客様のいないところでも、育成は進んでいます。だから、契約というゴールを見るときにも、もっと手前から本人を見たいのです。
普段の接し方から契約まで、10の中身を考える
契約を10とするなら、その前には何があるのか。お客様と出会うよりも手前から、少し細かく見てみます。
1.自分から挨拶する
朝、自分から「おはようございます」と声をかける。以前はできなかったなら、その一言も成長です。まだ契約は取れていなくても、本人の行動は変わっています。
2.相手に伝わる返事をする
返事ひとつでも、声の出し方や表情は変わりますよね。相手に伝えようとしているか、話を受け止めているか。私は、そういうところも見たいのです。
3.周りへの言葉遣いが変わる
同僚だから、先輩だからと、雑な言い方をしなくなる。用件が伝わればよい、で済ませずに、言われた側の気持ちにも目が向く。ここは、お客様への接し方にも出ると思います。
4.相手の状況に気を配る
聞きたいことがあっても、相手はいま手が離せないかもしれません。声をかけるタイミングや、頼み方を少し考えてみる。自分の都合だけで動かなくなる、ということですね。
5.教わったことを受け止め、試す
先輩に教えてもらったことを、まず仕事で試してみる。うまくいかなかったら、どこが難しかったのかを相談する。そうしてくれれば、教える側も次の話ができます。
6.周りが仕事を進めやすいように動く
自分の返事を待っている人がいることに気づき、こちらから連絡する。自分の仕事を終えることに加えて、その先で動く人のことも考え始める。こういう配慮も、見ておきたい変化です。
7.お客様の前でも、相手を見て話す
ここで、お客様とのやり取りにつながってきます。用意した説明を最後まで話すことばかり考えず、相手が理解できているか、話したそうにしていないかにも目を向ける。
8.お客様が迷う理由を聞く
早く決めてほしい気持ちはあっても、お客様には迷っている理由があります。何が気になるのか、どこがまだ分からないのか。そこを聞く時間を取れるかどうかです。
9.聞いたことを、そのままにしない
気になることを聞いたら、必要な確認をして返す。別の候補が合いそうなら、その理由も添えて提案する。相手を思う気持ちを、実際の仕事にしていきます。
10.契約につながる
そうしてやり取りを重ね、物件や条件が合い、お客様が納得して契約する。私には、その前にある言葉や行動も、ここにつながる仕事だと思えるのです。
これは、私の考えを10に分けてみた例です。人によって、すでにできていることも、つまずくところも違います。
こうして見ると、1から6までは、まだお客様への提案が始まっていません。それでも、これだけ見ておけることがある。契約件数の欄には出ない変化が、その人の普段の仕事には出ているのですね。
社内での接し方は、お客様の前にも出る
社内では周りに雑な言葉を使っているのに、お客様の前だけ丁寧に接する。私は、そんなに都合よく切り替えられるものではないと思っています。
敬語の形だけなら、覚えられるかもしれません。でも、相手の話を途中で遮らないことや、返事を待たせていることに気づくことは、普段からの接し方にも関わります。言葉をきれいにするだけでは、配慮が足りない場面もあるのです。
たとえば、先輩に仕事を教わりたいとき。自分が聞きたいことをすぐに話し始めるのか、今、声をかけてもよいかを確かめるのか。これはお客様へ連絡するときにも、つながる話ですよね。
同僚や先輩への頼み方が変わった。何かをしてもらったときに、お礼を伝えるようになった。そういう変化に気づいたら、本人にも伝えたいです。
契約が取れるまで、認めるのを待たなくてよいと思うのです。
声についても、全員に同じ大きさを求めたいわけではありません。その人が以前と比べて、相手へ伝えようとしているか。声や表情の変化をキッカケに、言葉や行動も見ていきます。
次の目標は、本人と握り合う
私の会社では、成長のマイルストーンを本人と握り合っていました。次の節目までに何ができるようになっていたいかを、本人と共有するということです。
会社から見て伸ばしてほしいことと、本人が難しいと感じていることには、ズレがある場合もあります。相談が遅いと感じていても、本人は、忙しそうな上司へいつ声をかければよいか迷っているかもしれません。そこを話してみれば、本人の取り組みと、上司が用意する時間の両方を考えられます。
たとえば、分からないことを聞けるようになった人がいたとします。次の課題を、すぐに「自分で全部考えよう」にすると、また聞きにくくなってしまうかもしれません。
まずは、自分がどこまで分かっていて、どこから分からないのかを添えて聞いてみる。そこまでできている人なら、自分なりに考えた進め方も一緒に伝えてみる。本人の今の状態に合わせれば、次に試すことが具体的になります。
そのとき、全部を一人でできるようにするのか、上司の確認を受けながら進めるのかも合わせます。同じ仕事でも、任せる範囲によってハードルが違うからです。
次にできるようになることを、本人が自分の言葉で説明できるか。
目標を決めたあとには、ここを確かめたいと思っています。評価する側だけが分かっている目標では、日々の仕事に使いにくいのです。
3か月の面談と、日々の仕事をつなぐ
私が行っていたのは、3か月ごとの成長面談や評価・昇給の見直しです。メンバーとは幹部が対話し、私は主に幹部との壁打ちを担っていました。
だからこそ、社長が幹部から何を聞くかも考える必要があります。売上の報告だけを受けていたら、その社員が何に取り組み、どこで困っているかまでは分かりません。
今、どの仕事を本人に任せているのか。前回と比べて何ができるようになったのか。次は何を任せるつもりなのか。こうした話があれば、幹部が育成に使う時間や、教え方についても相談できます。
ただし、目の前の案件で困っていることを、3か月後まで待つわけにはいきません。案内前の確認や商談後の振り返りなど、日々の仕事の中にも話せる機会が必要です。
面談では、その間に取り組んだことをまとめて振り返る。できるようになったことと、まだ支援が必要なことを確認し、次の期間の目標を決める。そうすれば、面談も実際の仕事とつながります。
私自身、評価を細かく考える中で、制度を複雑にしてしまった面もあります。成長について話す時間を大事にすることと、報酬の仕組みを分かりやすくすること。その両方が必要だと感じています。今回の10の例も、そのまま給与を決める採点表にするつもりはありません。
成長に合わせて、任せる仕事も変えていく
分からないことを抱え込まずに相談できるようになったなら、途中で確認する機会を設けて、新しい仕事を任せてみる。上司と一緒ならできた仕事を、次は本人が考え、最後に確認を受ける形で進めてみる。成長が見えたら、仕事の任せ方も少し変えていけます。
うまく進まなければ、どこで止まったのかを振り返ります。必要な知識がなかったのか、進め方が分からなかったのか、相談するタイミングを逃したのか。一つの仕事をたどると、次に教えることが具体的になります。
同じ課題が続く場合は、練習の内容や、上司の関わり方も見直します。本人には難しすぎる仕事だったのか、確認する機会が足りなかったのか。成長を期待するだけでは進まないので、試す仕事と支援をセットで考えたいのです。
もちろん、取り組んだ行動が申込みや契約にどうつながったかも見ます。営業には結果が求められますし、会社として、いつまでにどんな成果を目指すかを共有する必要もあります。
私が考えたいのは、結果を待っている間に、育てる側が何をできるかです。周りへの接し方に変化が見えたら、それを認め、次の仕事を任せてみる。相手を思いやる気持ちや配慮が、お客様とのやり取りでも生きるように育てていきたいと思っています。
育成を任せる幹部には、どんな力が必要なのか。売上を重視して社員を昇進させた私の経験は、こちらの記事にまとめています。
和泉に相談
社員の成長は感じるけれど、次に何を任せればよいか迷う。幹部に育成を任せたいけれど、面談が売上の確認で終わってしまう。
そうしたときは、本人が取り組んでいる仕事と、会社が期待している役割を見ながら、次の目標や幹部の関わり方を一緒に考えます。ご相談は、以下のお問い合わせフォームからお寄せください。
