営業の仕事は、お客様をつくること

問い合わせが来た。商品の説明をした。買っていただけた。
営業の数字としては、一件の成果です。
でも、私はそこで一つ、確かめたいことがあります。

そのお客様は、自分と話したことで、何を得られたのか。

もともと欲しい商品が決まっていて、買うつもりだったのか。それとも、話す中で新しい見方に気づき、自分に必要な理由が分かったのか。同じ一件でも、営業が果たした役割は違います。

和泉利明です。私は、営業の仕事は「お客様をつくること」だと考えています。お客様がまだ持っていない見方を提案し、その価値に納得して選んでいただく。自分の知識や経験を、目の前の方が買う理由につなげていく。

営業に求めたいのは、そこです。


目次
  1. 買ってもらえた理由に、自分の仕事は入っているか
  2. 「安いものが欲しい」の、その先を聞く
  3. 自分が勧める理由を持つ
  4. 「またあなたに聞きたい」をつくる
  5. 次の連絡で、こちらから何を出せるか
  6. 和泉に相談

買ってもらえた理由に、自分の仕事は入っているか

欲しい商品が決まっている方に、在庫や金額を伝え、手続きを進める。もちろん、その対応は必要です。説明が正確で、連絡も丁寧なら、お客様は安心して買えます。

ただ、その方が買おうと思った理由には、商品の魅力や広告の力もあるはずです。売れたという結果だけを、自分の営業力にしてしまうと、振り返るところがなくなります。

何を聞いたから、相手の事情が分かったのか。何を提案したから、選ぶ理由ができたのか。そういう自分の仕事が、その一件の中にあったかを見たいのです。

買ってくれそうな方を探すだけで、営業の仕事を終わらせたくありません。

まだ迷っている方もいます。何を選べばよいか、分からない方もいます。そもそも自分に必要なのか、判断がつかない方もいる。

そのときに、今は買わなさそうだからと、次の新しい問い合わせへ移ってしまう。そこには、営業が関われる余地が残っているのではないでしょうか。

新しい反響は、話を始めやすい。今月の売上が欲しければ、早く決まりそうな方に目が向く。その気持ちは分かります。

それでも私は、迷っている方に対して、自分が何を提供できるかを考えたい。そこを引き受けることに、営業の意味があると考えています。


「安いものが欲しい」の、その先を聞く

価値を提供すると言っても、特別な話術のことではありません。お客様の希望を聞いて、そこに自分の見方を加える。その違いは、身近な買い物でも説明できます。

例えば、仕事用のパソコンを買い替える場面を考えてみてください。

お客様の最初の希望は、「できるだけ安いものでいいです」

予算に合う商品を並べれば、価格の比較はできます。そこで、普段どこで使っているか、今のパソコンで何に困っているかも聞いてみる。

すると、資料作成だけでなく、お客様との打ち合わせにも持って行くことが分かったとします。今のものは重く、持ち歩くのが負担になっている。でも、買い替えるときには、まず値段に目が向いていた。

ここで初めて、提案できることが見えてきます。

予算の中で、持ち歩きやすさも比べてみる。打ち合わせで資料を見せるなら、画面の見やすさも確かめる。小さくて軽ければ何でもよいのか、それでは使いにくくなるのか。実際の仕事を思い浮かべながら、一緒に選んでいく。

買った瞬間の安さに加えて、使うときのことが判断に入ってきます。

「持ち歩くことまで考えるなら、こちらの方が自分には合いそうだ」

そう納得できたなら、その会話には意味があります。高いものを勧めたからでも、商品の機能をたくさん説明したからでもありません。お客様の希望を、その方の使い方に結びつけて、選び方を提案したからです。

私は、ここまでを営業の仕事として考えたいのです。希望に合う商品を探すときに、その希望がどこから来たのかも知ろうとする。相手への関心が、提案の出発点になります。


自分が勧める理由を持つ

営業には、商品についての知識が必要です。ただ、知識を覚えただけでは、目の前の方への提案にはなりません。

同じ商品でも、使う人や目的が違えば、役立つ部分は変わります。だから私は、商品が優れている理由だけでなく、なぜこの方に勧めるのかを、自分の言葉で説明したい。

私は、お客様に新しい選び方を提案するところまでが、営業の仕事だと考えています。

お客様が言った条件を全部揃えて、あとは選んでもらう。それだけでは、詳しくない相手に判断を丸ごと預けてしまうこともあります。

伺った話から、私は何を優先したらよいと考えたのか。どの商品が合うと思ったのか。その代わり、何を受け入れる必要があるのか。自分なりの見立てを、理由と一緒に伝える。

ここには、営業する側の判断が入ります。答えを待っているだけではできない仕事です。

もちろん、提案を受けて、お客様から違う事情が出てくることもあります。軽さを優先したいと考えていたけれど、実は画面の見やすさの方が大事だった、ということもあると思います。その話を聞いて、提案を考え直す。

こうしたやり取りを通じて、お客様自身も、何を大切にして選びたいのかが分かってきます。

営業が売りたい理由と、お客様が買いたい理由は、最初から同じとは限りません。だからこそ、相手の事情を聞き、どこに価値を感じてもらえるかを考える必要があります。

説明を聞いて商品を知るところから、その商品を自分が選ぶ理由が分かるところへ。営業として、そこまで関わりたいのです。


「またあなたに聞きたい」をつくる

一度買っていただいた方は、取引上のお客様です。ただ、私が「お客様をつくる」と言うときには、その方が自分を選ぶ理由まで考えています。

あの商品があったから、たまたま担当者として会った。その出会いから、この人に相談してよかった、次も聞いてみたいと思っていただけるか。

パソコンの例なら、自分では価格しか見ていなかったところに、普段の使い方を考えるきっかけをもらった。希望を伝えたら、それを受け取るだけでなく、自分に合う理由まで説明してくれた。

そういう経験が、次に迷ったときに思い出してもらえる理由になると考えています。

商品を選ぶ理由を提案する。
その関わりが、今度は自分を選んでいただく理由になる。

私がつくりたいのは、この関係です。商談の長さや、会った回数だけで決まるものではありません。一度の短いやり取りでも、その方に必要な視点を渡せることはあります。

紹介も、そこからつながる話です。

知り合いが困っているときに、自分が相談してよかった人を思い出す。この人なら、希望を聞いて、一緒に考えてくれると思ってつないでくださる。

お客様の記憶に、商品を買ったことと、自分に相談してよかったことの両方が残る。私は、そこまでを目指して仕事をしたいのです。


次の連絡で、こちらから何を出せるか

この考え方は、追客にもつながります。

返事が来ないから、また連絡する。それだけなら、お客様が決めてくれるのを待つことになります。前回の相談から、こちらが考えてきたことを届けられないでしょうか。

例えば、打ち合わせで資料を見せる使い方が気になっていたなら、候補の画面で実際の資料がどう見えるかを確かめてもらう。比べにくかった部分について、選ぶ手がかりを用意する。

そこまで考えれば、次の連絡には、返事を聞くこと以外の意味が生まれます。私は、お客様が迷っている間に、営業自身も考え続けて頂きたいと思っています。

何がまだ分からないのか。
自分の説明は届いていたか。
別の選び方を示せるか。

売上は必要です。会社が新しいお客様との接点をつくることも大切です。ただ、その接点を全部、新しい反響で補い続けるなら、集客の負担も続きます。

経営者として営業に期待したいのは、来てくれた方に、自社と付き合う意味を感じていただくことです。広告がつくった出会いに、営業自身の仕事を加えていく。

この方に、どんな新しい見方を提案できるか。
営業として、私はそこを考え続けたいのです。

その方が自分では気づかなかった見方を知り、納得して選べるようになる。そうやって、お客様になっていただく。

私は、そこに営業としての面白さがあると考えています。


和泉に相談

商品の説明はできている。でも、自社の営業が選ばれる理由は、うまく言葉にできない。そんなときは、実際の商談を一つ振り返り、お客様が何に迷い、営業のどんな関わりが判断に役立ったのかを、一緒に掘り下げます。

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